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太宰治の故郷舞台 津軽殺人事件 著・内田康夫

 
太宰治の故郷舞台 津軽殺人事件 著・内田康夫_c0316988_14345779.jpg

 古本屋で見つけた小説、『津軽殺人事件』(昭和63年7月発表作品)
 故・内田康夫の作品で光文社刊・書き下ろし「旅情ミステリー」の第10作目にあたる。長編としては39番目の作品。

 ある男が東京のホテルで毒殺された。その男が遺したメモには、「コスモス、無残。マネク、ススキ。アノ裏ニハキット墓地ガアリマス。』とあった。
 被害者は青森県弘前市で古書店を営み、また、太宰治に傾倒し「『津軽』を旅する会」の主宰者でもあった。上京の目的は、太宰治が描いたという肖像画の取引であった。刑事からそのメモを見せられた浅見光彦は、真相を突きとめるため愛車ソアラで、被害者の、そして太宰治の故郷である青森へ向かうのであった。

 この『津軽殺人事件』には、当然太宰の作品を引用した場面等も登場し、太宰ファンにとっては、どのように物語と絡めて話が展開されていくのか、読んでいて面白い作品だった。毒殺された男が持っていたメモの内容は、太宰の短編作品『ア、秋』の一節。しかし、「コスモス、無残」と「マネク、ススキ。アノ裏ニハキット墓地ガアリマス」は独立した2つの文章。
 このメモが意味することとは?
 読みながら、思わず主人公・浅見光彦になった気で、真剣にメモが意味することを拙い頭で考える自分がいた。

 太宰もまさか、自分の作品がこのようなミステリー小説で扱われるとは思っても見なかったことだろう。
 太宰がどう思うかは別として、作品として大変面白く、自分も毎年青森へ旅行に行くこともあってか、読みながら青森の情景が思い出され、懐かしい気持ちにもなった。
 作家が現地取材するのは当たり前だが、著者も弘前のホテルに長期滞在し、五所川原では、太宰治の生家『斜陽館』の二階に上がった突き当りの部屋に宿泊したという。羨ましい限りだ。(現在は記念館となっており宿泊は不可)
 『津軽殺人事件』は、『作品中に出てくる浅見の体験のほとんどは、僕自身(内田康夫)が津軽で出会った事柄の引き写しだと思っていただいて差し支えありません』とし、『僕にとってはひとしお思い出深い作品の一つ』であるという。
 また、弘前のホテルで滞在した際、『青い山脈』のロケーションで、舘ひろし、工藤夕貴、野々村真などのタレント達が同宿し、押し掛けるファンで賑やかだったそうだ。その時の情景が、『津軽殺人事件』の中に活かされている。
 こういった著者による解説や思い出話を知ると、小説というのはその作家が直接見たもの、聞いたもの、感じたもの、出会ったもの等、あらゆる体験があますことなく活かされて一つの作品に仕上がっていることが改めてわかる。

 そう考えると、太宰の作品は、太宰治だからこそ書けたのであって、太宰の経験、苦悩を真っ向から否定、軽蔑はできない。

Commented by tarukosatoko at 2024-12-31 20:14
森見登美彦の本に津軽が出てきて、またしても、太宰を読んでいます。『新樹の言葉』いいですね。この本も、読みます!(^^)!
Commented by dazaiosamuh at 2025-01-01 18:12
> tarukosatokoさん、あけましておめでとうございます
私も『新樹の言葉』好きです。(と言っても、私はどれも好きですが)
ぜひそれ以外の作品も読んでみてください。
by dazaiosamuh | 2024-12-29 06:30 | 太宰治 | Comments(2)