太宰治が現代に転生したら…

 書店で偶然発見した。『転生!太宰治 転生して、すみません』
 最近は書店でこの『転生』と題された本をよく目にする。私は今まで一度も読んだことがなく、興味もなかったが、それにしてもその種類の多さに驚き、書店の棚に並べられたその『転生』本を何となく眺めていたら、『太宰治』の文字が目に飛び込んできて、そこに『転生!太宰治』とあった。
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 2017年に転生した太宰治。気絶していたところを女性に救われ自宅で看病してもらうも、懲りずにその女性と井の頭公園の池で心中。
 その後、家を追い出されるような形となり、そこからカプセルホテル生活が始まり…メイドカフェを体験したり、自分の本を書店で発見して興奮したり、芥川賞のパーティに乱入しつまみ出されたり…。
 太宰はある日パソコンを手に入れ、カプセルホテルで起動し、寝ることも忘れてとググりまくる。そこでしがない地下アイドルのブログを発見する。それは自分が心中した女性(女性も無事)の妹・乃々夏であった。太宰は文壇に対する復讐として芥川賞を再び狙うことを決め、そのために乃々夏にまずは小説家になってもらうために、小説執筆と並行して、活動している地下アイドルのブログの文章の書き方のコツを教えたりなどし、アクセス数を順調に伸ばしていく。
 そしてある出版社からメールでオファーが届き…。

 現代に転生し、様変わりした世の中に戸惑いながらも喜びややりがいを見い出し、奮闘する太宰の姿が、「太宰っぽく」描かれている。太宰好きなら一度は考えた、「太宰が今の時代にいたらどんな反応、どんな生活をするかなあ」というのをそのまんま書いたような本です。妄想をそのまま本にしたような…。太宰治の作品の台詞も多く散りばめられているため、太宰の全作品、関連書籍を読んだことのある人ならすべて気付くはず。思わずにやりとしてしまう。太宰が三鷹の書店で自分の『太宰治コーナー』を発見し、店員から、教科書にも載っていますと言われたときの太宰治の嬉しそうな顔が頭に浮かんできます。
 もし太宰が本当に現代に転生したら、自分の本が何千万部も売れていることに驚愕し、それこそ良い意味でくらくらと眩暈し、倒れるかもしれませんね。
 読んでいて個人的に面白かったのは、メイドカフェでの話で、メイドカフェに来ている客の男性達のことを没落貴族と解釈し勘違いしているところ…。
客席に案内されて気づいたのは、店内の装飾が、やたらとピンク色を使っていることと、お客のほとんどが男性で、上等とはいえない格好をしていることでした。おしゃれから遠くはなれた、あるいは、おしゃれを履きちがえた服装が多く、これが本当に貴族なのかと、最初はとまどってしまいましたが、すぐに思い直します。
 彼らは、没落貴族なのです。
 みな、爵位をうばわれ、土地を没収され、おちるところまで落ち、服を買う金さえなく、それでも貴族の時代を忘れられず、妻の着物を質に入れたなけなしの金をにぎって、このメイドカフェに通っているのだと思うと、涙が出そうになりました。くるしい時代なのだ。それでも、生きるために、こうして、ひそひそ、貴族の残り香を嗅ぎに、いらっしゃるのだ。追憶。郷愁。ごっこ遊び。だとしても、私は彼らを、軽蔑しません。

 たしかに1948年から突然現代に転生したら見るものすべてに戸惑い、変な解釈をするかもしれませんが、読んでて「太宰、アホすぎるよ」と思わずクスっと笑ってしまいます。
 あくまで現代に太宰がいたらこんな感じかなあというのを書いてみた、「太宰っぽい感じ」の本ですね。気分転換に読むには良いかもしれません。


Commented by tarukosatoko at 2018-11-19 13:41
絵が太宰の面影を残しつつ、美形になっていますね。面白そうです!
前に輪廻転生に興味を持っていたとき、転生を信じたら真面目に生きることが楽になるのだなと思いました。転生があると考えると、生きていろいろ活動することがのちのちに生きてくることになるので、無駄なことをしていないと思えるのです。しかし、転生があるかどうかは、死んでみないとわからないですね。
Commented by dazaiosamuh at 2018-11-21 11:38
> tarukosatokoさん、転生が本当にあるのかないのか分かりませんが、しかし、今を懸命に生きなければならないことに変わりはありませんね。もし本当に転生があるとして…、転生の意味は何なのでしょうね。転生するなら、家族や仲の良い友人たちと一緒に転生できたら楽しいでしょうね!(笑)
by dazaiosamuh | 2018-11-13 14:09 | 太宰治 | Comments(2)