田部あつみと広島 №13 喫茶店『平和ホーム』

昭和五年三月、新天地の新天座の横をすこし入ったところに、喫茶店平和ホームが開店した。テーブルも椅子も真新しく、内装も凝っていて開店早々にしては客の入りはいいほうだった。平和ホームのあつみは、いまでいえばウェイトレスだが、客のなかにはそのあでやかなあつみを目当に通うものが少なくなかったのである。高面順三もその一人であった。』(太宰治 七里ヶ浜心中)
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 新天地の新天座は調べた結果、ちょうど現在の中央通りの場所に位置していたようです。古地図で確かめました。写真の中央通り付近だと思います。
 あつみが平和ホームで働くことになったきっかけは、西松原の田部家の近所に住むお妾さんが、スポンサーに金を出させて新天地に喫茶店を出すことになったのだが、自分の姪と一緒に、あつみさんにも喫茶店を手伝ってほしい、と田部家に依頼があったからであった。その頃のあつみは、女学校を中退し、家の家事をしながら毎日華道や茶道の稽古に明け暮れていのであった。その喫茶店の話が持ち出されたとき、新天地の中心地で働けるということに魅力を感じ、心が動いたあつみは、開店と同時に働くことになったのであった。
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新天地の新天座の横をすこし入ったところ』とあるので、このすぐ付近に喫茶店『平和ホーム』があったのだと思います。偏見かもしれませんが、正直『平和ホーム』という店名は、介護施設や老人ホームのような印象を受けます。『平和ホーム』とだけ聞くと、まさか喫茶店だとは思いつかないです。

順三は、日課のように平和ホームに通った。一日に二度も三度も現われることもあって、その熱心さは大勢のあつみファンのなかで格別だった。
 熱心に通う順三に対してあつみも次第に惹かれていき、二人で一緒に出掛けたりなど、距離を縮めていくのであった。

 次回はあつみと順三が行った比治山を書きます。

by dazaiosamuh | 2016-09-19 12:16 | 太宰治 | Comments(0)