太宰治特集! 語り芝居!

 初めて語り芝居というものを見て来ました。しかも太宰治の作品で劇を見ることも初めてです。
 『語り芝居 太宰治特集
 この企画はJ-THEATERが、太宰治朗読家の第一人者である原きよさんと協力して作り、稽古を積み重ねて完成させた太宰作品の語り芝居です。
 作品は、『失敗園』『尼』『貨幣』『清貧譚』の4つで、私が観た日の演目はその内の3つの『失敗園』『尼』『貨幣』です。12月21日~23日の3日間でした。
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 場所は東京都世田谷区北沢にある小劇場『楽園』で、小田急線・京王井の頭線『下北沢駅』の南口から徒歩で約3分の場所にあります。私は下北沢を訪れること自体が初めてで、劇場の多さに驚きました。
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 さて、実際にその語り芝居を見たのですが、自分で読むのとは違って、太宰の作品の中にいるような臨場感がありました。『失敗園』は、愚妻によって植えられた庭で、愚痴り、蔑み、また自己憐憫に浸る植物たちの様子が描かれている。
 例えば、にんじん
どうにも、こうにも、話にならねえ。ゴミじゃ無え。こう見えたって、にんじんの芽だ。一箇月前から、一分も伸びねえ。このまんまであった。永遠に、わしゃ、こうだろう。みっともなくていけねえ。誰か、わしを抜いてくれないか。やけくそだよ。あははは。馬鹿笑いが出ちゃった。

 自分で読んでも面白いが、いざ芝居を見ると、これがまた面白い。周りの人たちは真剣に見ていたが、声を抑えて笑うのに苦心しました。他にも、だいこん、とうもろこし、トマト、へちま、薔薇などが思いを吐き出す姿を役者が自身の個性を出しながら演じる姿は面白くて素晴らしかったです。個人的に、へちまが一番好きです。
『尼』は『陰火』の中の一篇で、『エロチシズムが幻想化された作品』と言われているみたいですが、太宰はどういう思いで書いたのでしょうか。突然現れた尼、その尼とのやり取り、蟹のお話…。尼の眠りとともに如来様が…。最後は小さな人形になって…。
『貨幣』は百円紙幣が語り手となって、戦前から戦後にかけて人から人へと渡り、その当時の有様、人々の生活が、百円紙幣を通して私たちに訴えるかのように伝わってきます。私も何度か、自分の使ったお金が今どこへ、誰の手に渡っているのかと考えたことがありますが、太宰は百円紙幣を握り、見つめながら当時の人々の生活の営みに何かを感じて書いたのでしょうか、風刺的に書かれていますね。

 パンフレットに衣装について興味深いことが記載されていました。
この舞台には、太宰に縁のある衣装が数点登場いたします。彼の写真として有名な、スツールに胡座で座る一葉は銀座のバー「ルパン」でのもの。その初代オーナー高崎雪子さんの着物を、タケ、尼、百円札が着用しています。また太宰が通った三鷹のうなぎ屋台「若松屋」の女将小川恵子さんの羽織を『貨幣』の酌婦が召します。いずれも原きよが遺族の方から受けた宝物。太宰が目にしたかもしれない着物を、彼の遺した言葉とともにお届けします。

 なるほど、当時もしかしたら太宰が実際に目にしたかもしれない着物、羽織だったのですね。芝居が始まる前にちゃんとパンフレットを読んでおけばよかった。

 今回初めて太宰の作品を芝居を通して見ましたが、当り前かもしれませんが芝居の方がイメージも湧きやすく入り込みやすかったです。それにこういった機会がないと、太宰が見たかもしれない着物、羽織にお目に掛かることもありませんので(もっとちゃんと見ておけばよかった)、とても貴重な体験ができて良かったです。

by dazaiosamuh | 2015-12-26 14:41 | 太宰治 | Comments(0)