桜の季節 太宰も歩いた春の井の頭恩賜公園

 先週、エイプリルフールである4月1日に井の頭恩賜公園へと足を運んだ。別段、お花見に行きたいわけでも無かったが、桜が咲く景色の中での太宰のお墓を写真に収めたかったので、そのついでに寄っただけのことである。

『吉祥寺で降りて、本当にもう何年振りかで井の頭公園に歩いて行って見ました。池のはたの杉の木が、すっかり伐り払われて、何かこれから工事でもはじめられる土地みたいに、へんにむき出しの寒々した感じで、昔とすっかり変わっていました。』(ヴィヨンの妻)

 私はまず吉祥寺駅で降りた。吉祥寺駅から、井の頭恩賜公園を通ってお墓に向かおうと思っていた。駅を降り立つと、春休みということもあって人の波がすごかった。流されるまま、井の頭公園へと進んでいった。

 到着し公園内を見渡すと、井の頭池を取り囲む桜の木々たちが目に飛び込んできた。その桜の木々、井の頭池を眺めながら沢山の親子連れがシートを敷き、お花見を楽しんでいた。他にもおじさんの集団が酒で賑わっていた。私がここへ来た時には、まだお昼もまわっていない。この分だと昼過ぎには酩酊してお花見どころでは無くなるのでは、と思った。
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 井の頭池では、ボートを楽しむ姿も沢山あった。孫と一緒に乗るおじいさんの姿、恋人同士で二人の世界に酔いしれる姿、若かりし頃に戻って楽しむ夫婦の姿、春の井の頭公園は、多くの人びとに幸福をプレゼントしてくれたようだ。
 
 この井の頭恩賜公園は、1917年(大正6年)5月1日に開園した。武蔵野三大湧水池の一つで、日本さくら名所100選にも選定されている。武蔵野市の南東から三鷹市の北東にかけて広がる大きな公園で、池は神田川の流れの一部も井の頭公園に含まれているらしい。
 ゆっくりと散策していると、池の水面にまで伸びた枝々、池の水に浸る桜の枝もあり、水面に映る桜の花、そして青空との鮮やかな対照は見事。

『ここは東京市郊外ではあるが、すぐ近くの井の頭公園も、東京名所の一つに数えられているのだから、此の武蔵野の夕陽を東京八景の中に加入させたって、差支え無い。』(東京八景)

 また、他にも太宰の小説に『水仙』『乞食学生』等、何度もこの井の頭公園は登場する。太宰は何度もここへ散策しに来たに違いない。ここで桜を見ながらお酒を飲む事はなかったのかな。
 
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  景色もそうだが、お花見を楽しむ親子の何とも幸せそうな姿に、私の心もまた幸せになった。満足であった。私の心に一枚の『芸術の絵』として残したい、そう思った。こんな幸福な姿をいつまでも見ていたかった。顔を上げ、咲き誇る桜に目をやり、「桜さん、早く散らないでください。彼らの幸福な時間を、少しでも長く与えてください。お願いします。」、心からそう願った。

 井の頭公園を後にし、私は太宰のお墓へと向かった。前回は大雪の日に行った時だ。雪景色の太宰のお墓と違って、桜と一緒に写る太宰のお墓は、ぽっと温かみがあるように見える。季節によってお墓もまた変わるのだ。すでにお花が供えてあった。
 太宰も空の上でお酒を飲みながら、お花見を楽しんでいるに違いありません。
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 私はこの日、冒頭で書いた通りお花見をしに来たわけでは無い。だが、青空の下、咲き誇る桜に魅了され、幸福な家族の姿に心を打たれた。実に思いもよらぬ幸福を受けたのだった。

 エイプリルフール

 つまり、いままでお花見の季節は飲み食いしか頭になかった私にとって、思いもよらぬ幸福に、良い意味で、まんまと騙されたのであった。

by dazaiosamuh | 2014-04-07 14:57 | 太宰治 | Comments(0)