神保町 太宰治は柏水堂に来たのか 【追記 H27.3月31日閉店】

 1年程前、私は友人に案内されて、古書店が建ち並ぶ本の町、神保町へ行ってきた。太宰の初版本や太宰が来たと言われる柏水堂というお店を訪れるためである。太宰の初版本は一度もお目に掛かったことがない。そもそも、神保町に来たことじたいないのである。少しばかりわくわくしながら、友人に案内されて神保町の古書店街を歩いた。
 
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 私と友人は、地下鉄丸ノ内線淡路町駅を降り、靖国通りを真直ぐ進んだ。古書店街に着くと、友人は早速太宰の本のありそうなお店に案内してくれた。友人は平然としながら店内を見ていたが、私は古書店に入るのは初めてで落ち着かなかった。特にお店の主人が怖そうな人だと、思わずちらちらと意味もなく警戒した。何年か前、テレビで古書店を巡る番組をやっていて、ある店の如何にも怖そうなご主人が、古書の扱いについて厳しく語っていたのを思い出した。その時、その店のご主人が言っていたのが、古書の扱いが分かっていないお客さんには、厳しく注意し、二度と来店しないように言うそうです。その時のことを思い出してしまい、本を棚から抜き出すのに最初は非常に緊張した。そんな私の心情も知らず、友人は店内をざっと見て、ここに太宰の本がありますねと教えてくれた。棚を一瞥すると、「人間失格」のタイトルが目に飛び込んできた。私は恐る恐る棚からそっと抜き取り、自身、細心の注意を払っているつもりでぱらっとめくり、ちらっと店のご主人の方を見た。瞬間、ご主人と目が合った。ごくりと唾を飲んだ。数十秒間ぱらぱらと本をめくった。何も注意を受けなかった。合格である。無言の合格である。最低でも私の古書の扱いは悪くないようで、安堵し、その後は気兼ねすることはなかった。
 太宰の初版本を手に取った私は、とても興奮した。特に人気の高い「人間失格」「津軽」「桜桃」「斜陽」などは、私をより一層興奮させた。状態によって金額も違うため、お店を回って見比べるのも楽しい。案内されて、太宰の本が多くあるお店も大体把握できた。特に八木書店、田村書店、けやき書店が太宰関連の書籍を多く取扱っていた。
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 ある程度見てまわった私と友人は、帰りに太宰が来たと言われる柏水堂に立ち寄った。柏水堂は昭和4年(1929年)から続く老舗の喫茶・洋菓子店だ。お店に入ると、友人が先陣を切って店員の方にここに太宰治が昔来たことがあると聞いたのですが…と聞いてみたが、全く分からないようで、話を聞くことができず残念であった。せめて柏水堂のオーナーからなら、何かしらの話を聞かせてもらえるのではと思ったのだが、2009年7月に、火事によりオーナー(86)はお亡くなりになられているそうです。ここは店舗・工場兼自宅で、4階の自宅寝室から出火したそうです。それでもお店は健在で、訪れたときはお客さんも多く元気に営業していました。

 しかし、太宰治が柏水堂に来たという情報はネットで少し載っているだけで、詳しい情報は全く分かりません。私の見る限り、太宰関連の書籍にも記載されていないと思います。ネット上では、「柏水堂に通った」「ケーキを食べた」ぐらいしか書かれていなかった。オーナーも亡くなり、今となっては詳しい情報を知る手がかりはないようです。

 追記 柏水堂は、H27年(2015年)、3月31日に閉店。


by dazaiosamuh | 2014-01-30 01:46 | 太宰治 | Comments(0)