太宰の故郷を旅する 2日目 №3 太宰治の銅像!

 『斜陽館』を出て、一緒に館内を周った女性と別れた私は、太宰治の銅像があるという芦野公園へと行くことにしました。途中、太宰が幼い頃に津島家に年季奉公に来ていた子守のタケに連れていかれたというお寺に少し寄ってみた。『雲祥寺』というお寺で、タケは太宰を連れて行き「地獄絵図」を見せたのだ。幼い太宰は「地獄絵図」の描写とタケの話に恐怖し、泣き出した。この時の場面を小説『思ひ出』に書いている。
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『たけは又、私に道徳を教えた。お寺へ屢々連れて行って、地獄極楽の御絵掛地を見せて説明した。(中略)嘘を吐けば地獄へ行ってこのように鬼のために舌を抜かれるのだ、と聞かされたときには恐ろしくて泣き出した』

 誰もがあるかもしれないが、私も幼い頃にお葬式などでお寺へ行ったとき、掛けてある地獄絵図を見て恐怖したものだ。泣きはしなかったが、血の池に無理やり入れられる人、針山を登らされる人、宙吊りにされノコギリで股から切断される人などの描写は幼い私に衝撃を与えた。タケが太宰に言ったように、私の父も「悪いことをすると地獄行になり、この絵に描かれているような罰を受けるんだぞ」と私に言い聞かせた。私も太宰と同じく、「地獄絵図」によって道徳を学んだ内の一人ということです。残念ながら時間が押していたため、中には入らず外観だけを写真に収めました。

『雲祥寺』から徒歩2分ほどの所にも、『南台寺』というお寺があり、ここは子供たちのために日曜学校を開き、本の貸出しを行っていたお寺だ。こちらも太宰は『思ひ出』の中でタケとの思い出を書いている。
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『私がたけという女中から本を読むことを教えられ二人で様々の本を読み合った。たけは私の教育に夢中であった。私は病身だったので、寝ながらたくさん本を読んだ。読む本がなくなればたけは村の日曜学校などから子供の本をどしどし借りて来て私に読ませた。私は黙読することを覚えていたので、いくら本を読んでも疲れないのだ』

 このことから、いかに太宰が本に親しんできたかがうかがえる。ちなみにたけは、自分が使った尋常小学校読本を見せながら太宰に文字を教えたと言われている。

 ここで『南台寺』の写真を数枚撮ったところでなんと、デジカメの電池残量が無くなってしまいました。やむを得ずスマホで代用することに。しかし、スマホも電池が半分ほどしか残っていないため、せめて『芦野公園』の太宰治の銅像を撮るためにも必要最低限の写真しか撮らないことにしました。デジカメが古いのと、前日旅館で充電しなかったためです。

 『芦野公園』には、『斜陽館』から徒歩16、17分ほどかかります。流石にこの時期でも16、17分も歩くとじんわりと汗が出てきます。到着してからも入口から太宰の銅像がある場所まで徒歩3、4分かかりました。公園には芦野湖と呼ばれる溜池があるのだが、季節のせいもあってか訪れた私以外、一人もいませんでした。この公園での思い出を、妻・津島美知子は『回想の太宰治』で少しだけ触れている。

『五月初めの観桜会、夏のボート遊びに賑わうというこの公園も、十一月の午後、全く人影がなく、太宰も私も口少なになってしまった。松と桜の林の奥に大きな溜池が静まり返っていた。一隻ボートがつながれている。その池の堤に腰をおろしてしばらく休んだ。引き返して玄関を入ったときには、もうたそがれ近くなっていた』

 溜池を少し過ぎた所に、太宰治文学碑太宰の銅像がひっそりとたっていました。文学碑には、小説『晩年』の中にある『』から引用されたヴェルレーヌの詩が刻まれていました。
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 昭和四十年五月、『芦野公園』の登仙岬に建立。太宰が生前、好んで口にしていたといわれるヴェルレーヌの一節が刻まれていて、碑の最上部はラフェナールに黒で炎を現わし、その中に「不死鳥」が金メッキで浮き彫りにされている。この不死鳥は火のなかに飛び込み古い身を焼き、五百年に一度、新しく生まれ変わるというギリシャ神話から引用して太宰の生まれ変わりを意味しているらしい。さらに、中央の鉄格子は「人間の道には狭いけわしい一つ一つの門がある」ということを意味するもので、太宰がよく遊んだ芦野公園、大倉岳、賽の河原などがよく見通せることも加味して製作された。
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 太宰の銅像は、平成二十三年に生誕百周年を記念して建てられたものだ。まさか太宰は自分の銅像が建てられているなんて思ってもみないだろう。しかし、この銅像の太宰の表情は生まれ故郷の金木、そして自分の生家を見守っているように感じられました。数分間、銅像の太宰を見つめ電池の少ないスマホで写真に撮りました。銅像の太宰に「それじゃ、また来るからね。では失敬」と軽く会釈し、公園を出て行きました。
by dazaiosamuh | 2013-12-28 00:38 | 太宰治 | Comments(0)