遠い空の向こうへ

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太宰の他に映画等、色々載せれたらいいなと思っています。

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 深浦の秋田屋旅館に泊まった翌日の昭和20年7月31日、太宰一家は駅の発車時間まで間があったので、海での団欒を楽しんだ。その時のことが『回想の太宰治』に書かれている。
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翌日は、晴天で、窓をあけてみると空地に網や漁具が干してあって、漁港に泊ったことを実感した。宿に頼んでワカメを土産用に買って駅に向かった。…(中略)…夕方までに金木へ着けばよいので、のんびりした気持で駅で発車の時間をたしかめてから、足はしぜんに海べに向かった。
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朝の海は凪いでいて大小様々の岩が点在し、磯遊びには絶好であった。四つの長女はまだ海を見たことがない。一家で子供中心の行楽の旅に出たこともなかったから、私たちははしゃいで、しばらく海べでのまどいを楽しんだ。
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 太宰一家が訪れた当時は、広く大きな砂浜が広がっていたが、今はないようだ。せっかくの楽しい一家団欒のひとときであったのに、太宰はこれを題材に金木で「海」というコントを書いている。それに対しての不満を、妻・美知子が書いている。
海を指して教えても川と海の区別ができない子、居眠りしながら子の言葉にうなずく母
 
 海というと私に浮ぶのは、あの深浦の楽しかった家庭団欒のひとときである。「浦島さんの海だよ、ほら小さいお魚が泳いでいるよ」とはしゃいだのはだれだろう。太宰自信ではないか。なぜ家庭団欒を書いてはいいけないのか…私は「海」を読んでやり切れない気持であった。

 せっかく家族で楽しい時間を過ごしたのに、それとは正反対のことを書かれた妻からすれば当然不満であることはたしかである。しかも一番はしゃいでいたのは太宰である。がしかし、これが作家というものなのだろう。太宰も妻子と海辺で楽しい時間を過ごしたことは間違いないのだから、大目に見てほしい。

 深浦の記事はこれで最後になります。


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# by dazaiosamuh | 2017-11-01 10:18 | 太宰治 | Comments(2)

by 黒森 富治大(くろもり ふじお)