遠い空の向こうへ

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太宰の他に映画等、色々載せれたらいいなと思っています。

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太宰治と木造 №4 木造はコモヒの町!?

 太宰治は『津軽』の『五 西海岸』で、『木造は、また、コモヒの町である』と木造のコモヒをかなり印象深く書き、自分なりのコモヒ論を展開している。
コモヒというのは、むかし銀座で午後の日差しが強くなれば、各商店がこぞって店先に日よけの天幕を張ったろう、そうして、読者諸君は、その天幕の下を涼しそうな顔をして歩いたろう、そうして、これはまるで即席の長い廊下みたいだと思ったろう、つまり、あの長い廊下を、天幕なんかでなく、家々の軒を一間ほど前に延長させて頑丈に永久的に作ってあるのが、北国のコモヒだと思えば、たいして間違いは無い。
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 写真の右側の屋根のあるガラス張りの通路がコモヒ。日ざし除けには最適であるのはたしかであるが、

しかも之は、日ざしをよけるために作ったのではない。そんな、しゃれたものではない。冬、雪が深く積った時に、家と家との聯絡に便利なように、各々の軒をくっつけ、長い廊下を作って置くのである。吹雪の時などには、風雪にさらされる恐れもなく、気楽に買い物に出掛けられるので、最も重宝だし、子供の遊び場としても東京の歩道のような危険はなし、雨の日もこの長い廊下は通行人にとって大助かりだろうし、また、私のように、春の温気にまいった旅人も、ここへ飛び込むと、ひやりと涼しく、店に座っている人達からじろじろ見られるのは少し閉口だが、まあ、とにかく有難い廊下である。

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 太宰が書いている通り、大雪の積もる津軽ならではの歩道である。これなら雪が積もっていても平気な顔してあるくことができる。もちろん雨の日や風の強い日、日ざしの強い日にも重宝される。こどもが車と接触する恐れもない。6月のじわりと汗がにじむ日に訪れたが、たしかにコモヒに入ると、ひやりと涼しく快適であった。しかし、写真を見て分かる通り、現在は廃れてしまっており、いつからなのか分からないが商店もかなりが閉店している。

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 ガラス戸が無いコモヒもあった。せっかく屋根はあるが、これでは雪が降った時に通路に入ってきてしまいそうだ。ガラス戸があってこそその特性を活かすことができるはずだと思うのだが。
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 商店も閉店だらけでコモヒも疲れ切っているように見える。コモヒがずーっとくっついて続いているものだと思っていたのだが、所々がすでに無くなっており、あったりなかったりである。
 太宰はさらに、コモヒの語源についても言及している。
コモヒというのは、小店(こみせ)の訛りであると一般に信じられているようだが、私は、隠瀬(こもせ)あるいは隠日(こもひ)とでもいう漢字をあてはめたほうが、早わかりではなかろうか、などと考えてひとりで悦にいっている次第である。

 なかなかに木造において太宰はこのコモヒが非常に印象に残ったようだ。というのも、
この町のコモヒは、実に長い。津軽の古い町には、たいていこのコモヒというものがあるらしいけれども、この木造町みたいに、町全部がコモヒに依って貫通せられているといったようなところは少ないのではあるまいか。いよいよ木造は、コモヒの町にきまった。』と、その木造のコモヒのあまりの長さに強い印象を受け、木造町を、『コモヒの町にきまった』としたのだ。
 しかし、現在は『町全部がコモヒによって貫通せられている』とはとてもじゃないが言う事はできない。部分的にしか残っていないのだ。しかも現在残っているコモヒも閉店している場所も多く、そのうちそのコモヒも取り壊されるであろう、コモヒの町では無くなってきている。

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 このコモヒも商店はみな閉店しおり、しかもガラス戸も無く、柱はサビだらけである。遅かれ早かれ取り壊されるのではないだろうか。
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 歩いていて気付いたが、地面をよく見ると、そこにはガラス戸のレールが残っており、かつてここにコモヒがあったことを示している。太宰が、『町全部がコモヒに依って貫通せられている』と書いていた通り、ずーっと奥までコモヒが途切れることなく続いていたのだ。

 これからさらに時代が進めば、木造からコモヒは消えてなくなるだろうと思われる。しかし、そうなると冬季はどうなるのだろう。コモヒがないと歩きにくいのではないだろうか。それとも最近の津軽は積雪は太宰がいた当時より多くないのか。

 どちらにしても木造のコモヒを見ておくなら今のうちに見ておいたほうがいいだろう。


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Commented by tarukosatoko at 2017-08-10 21:40
関西にも、こもひがほしいです。こもひの中に冷房をいれたら、猛暑の夏も快適…、黄砂とか花粉が飛ぶ日もこもひの中は…、と、いろいろ想像しました。わたしも津軽旅行がしたくなりました。

ところで、竜飛岬は?
Commented by dazaiosamuh at 2017-08-11 17:35
> tarukosatokoさん、日本全国の商店街にコモヒを設置してほしいですね。竜飛のほうへはまだ聖地めぐりもしていません。今回の記事は、木造、鯵ヶ沢、千畳敷、深浦を書いていく予定です。竜飛へ行きたいですが、あえて行かないで聖地巡りの楽しみを残しているというのも理由の1つです。でも我慢できずにそろそろ旅に出るかもしれません。
by dazaiosamuh | 2017-08-07 21:23 | 太宰治 | Comments(2)

by 黒森 富治大(くろもり ふじお)