遠い空の向こうへ

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太宰の他に映画等、色々載せれたらいいなと思っています。

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太宰治 今も残る!太宰が入院した経堂病院!

神経衰弱や胸部疾患の治療のために、たしか長兄の友人関係であった世田谷の経堂病院に移ってからは、ぼくも二回ばかり見舞にいった記憶がある。』(人間太宰治 山岸外史

 昭和10年(1935)4月4日。太宰は原因不明の腹痛に襲われ、阿佐ヶ谷の篠原病院で診察を受けた結果、急性虫様突起炎(現在の急性盲腸炎)と判明し即入院(この篠原病院は2014年5月の記事で書いています)。
 篠原病院で手術を受けたが、この時の手術が原因で腹膜炎を併発し、患部鎮静のためパビナール注射を打つようになる。そして、同月10日ごろ長兄文治の友人で沢田という医師がいる経堂病院に移ることになった。
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 新宿から小田急線で一本、各駅で20分、私は経堂駅の改札を通った。私が訪れたのは、今年3月の雪がほとんど溶けたが、しかし、まだ肌寒い日であった。東京に来て数年の私はもちろんのこと、東京に住んでいる人も、この『経堂駅』は普段あまり聞かない駅ではないでしょうか。
 駅を降りて地図を見ながら進むと、わずか徒歩5,6分の場所にその病院はあった。
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 場所は当時から変わらないようです。写真では分かりにくいですが、なかなか古い建物です。改修工事などはしていると思いますが、たぶん建物も当時から変わっていないのではないでしょうか。太宰治ゆかりの地の貴重な建物だと思います。

 先に紹介した長兄文治の友人である沢田という人が、当時の経堂病院院長でした。太宰家は人脈が広いですね、流石です。
ぼくもそのひとつひとつを明確におぼえてはいないが、この期間に太宰がぼくに宛てたハガキがあるからそれなどでその頃の状況を推察するよりほかないようである。』(人間太宰治 山岸外史
友人の山岸外史は、当時経堂病院に入院していた太宰に手紙を送り、その返事のハガキを受け取っている。

お手紙、いま読んだ。よい友を持ったと思った。生涯の記念になろう。こんなときには、ダラシナイ言葉しか出ないものだねえ。歓喜の念の情態には、知識人も文盲もかわりない。「バンザイ!」これだ。
 君は僕の言葉を信じて呉れるか。文字どおりに信じて呉れ。いいか。「ありがとう。」……


 だらしないというか、少し気障というか、「生涯の記念になろう」とは少し大袈裟である。生来寂しがりやの太宰らしいセリフでもある。
そして、経堂病院に入院中のこの頃から、患部の苦痛を鎮めるために、パピナールの秘密の使用をはじめたらしいが、むろん、ぼくはそれを知らなかった。何カ月もあとになって知ったが、太宰は、その間、初代さんにも堅く口止めしていた。ほとんど誰一人として友人は知らなかったようである。いったい、パピナールの中毒症状というものはモヒそのものよりは軽いのではないかと思うが……』(人間太宰治 山岸外史
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 パビナール中毒は治らなかった。そして上記に書いてある通り、太宰は周りに知られないように、隠れて注射を打つようになっていくのであった。
 太宰は昭和10年の4月10日ごろから6月まで入院し、6月30日に退院している。太宰の『東京八景』にも少し書かれているので、一応載せます。
私は伝染病患者として、世田谷区・経堂の内科病院に移された。Hは、絶えず私の傍らに附いていた。ベエゼしてもならぬと、お医者に言われました、と笑って私に教えた。その病院の院長は、長兄の友人であった。私は特別に大事にされた。広い病室を二つ借りて家財道具全部を持ち込み、病院に移住してしまった。五月、六月、七月、そろそろ藪蚊が出て来て病室に白い蚊帳を吊りはじめたころ、私は院長の指図で、千葉県船橋町に転地した。海岸である。町はずれに、新築の家を借りて住んだ。

 この経堂病院を退院してすぐに、船橋へと転居することになる。太宰の人生のなかでも、波乱な時代、船橋時代へと突入していくことになる。
 順番でいくと、昭和10年4月上旬に阿佐ヶ谷の篠原病院、4月中旬から6月末までが世田谷の経堂病院、そして、7月から翌年昭和11年10月中旬までが、太宰にとって辛くも愛着があった船橋時代になります。

 経堂病院は古いが、地域から信頼され、愛されているからこそ続いているのだと思います。ちなみに、内科、消化器科、循環器科、呼吸器科、泌尿器科を扱っている。
 現在、篠原病院は全く別の建物に変わってしまっているが、経堂病院は今も元気に活躍しているようだ。太宰ゆかりの地の数少ない現存する建物なので、太宰が好きで史跡巡りをしたい方は、こういった建物を優先して見ておいた方がいいかもしれません。
 ただし、病院等は、カメラでパシャパシャ撮っていると病院のスタッフから変な目で見られるので気をつけることを、一言いっておく。




 

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by dazaiosamuh | 2014-08-29 12:19 | 太宰治 | Comments(0)

by 黒森 富治大(くろもり ふじお)