遠い空の向こうへ

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太宰の他に映画等、色々載せれたらいいなと思っています。

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太宰治と共に心中した山崎富栄の墓

 富栄 「太宰さん以外、私の死ぬ本当の意味は分からないわ」
 太宰 「愛している証拠だよ」とつねる。
 富栄 「愛って、痛いものね」


 太宰を敬愛し、そして、最後に共に玉川上水で命を絶った女性、山崎富栄のお墓は江戸川橋駅から、そう遠くない徒歩5,6分の場所にある永泉寺の墓所に建てられている。
 先月の6月19日には、桜桃忌に参加させてもらった。しかし、太宰の桜桃忌に行くことばかりに夢中になっており、共に心中した山崎富栄のことはすっかり念頭になく、なんとも失礼なことであった。そのため、数日前に私は、一週間以上過ぎていたがさくらんぼとお線香を持参して富栄のお墓を訪れた。

 江戸川橋駅を出て橋を渡り、途中、小さいお店でさくらんぼを買い求めた。そのお店のすぐ左の道に左折し、坂を上っていくと、わずか数分で永泉寺が見えてくる。
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 当初、太宰のお墓の場所(禅林寺)は知れ渡っていたが、富栄のお墓はどこにあるのか、知る者は殆どいなかった。しかし、太宰治の研究者・長篠康一郎が苦労の末、見つけだしたのだが、それにはある事情があった。長篠康一郎著太宰治文学アルバム 女性編』から。
『山崎富栄の遺骨は密葬のあと父の山崎晴弘が八日市町に持ち帰り、母信子との最後の別れののち再び上京、山崎家の菩提寺である永泉寺(文京区関口町二ノ三ノ二八)に埋葬された。だが山崎晴弘は、娘が世間を騒がせて申し訳ないとの考えから、富栄には白木の墓標を建てただけで、住職の安田弘達師に対しても、富栄の墓所が永泉寺に在ることを世間には公表しないで欲しいと依頼したという。後年、山崎富栄のお墓を探すために、私が長年月を要することになってしまったのにも、こうした事情が存在したからである。』

 父・晴弘の娘に対する配慮であった。それは、書かれてある通り『娘が世間を騒がせて申し訳ない』との考えや、相手の津島家に対する配慮、しかし、1番はやはり、娘・富栄を守るためだったのではないでしょうか。
 亡くなった当時は非難の嵐であった。富栄が太宰を殺したというデマも流れた。薬を飲ませてから入水したのでは、首を絞めてから川に引っぱりこんだのではなど、身勝手な、様々な中傷が飛び交い、太宰の死の悲しみが深ければ深いほど、それは富栄への憎しみ、恨みへと変わっていった。こういったことから、娘を守る意味も含めて、富栄の眠る墓所を知られたくなかったのではないでしょうか。
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 お墓に到着すると、すでに桜桃忌から10日ほど経っていたためか、花はすでに枯れていた。缶コーヒーやジュース、お酒が、何時からなのか分からないが置かれていた。
 私は、持参したさくらんぼをお供えし、お線香に火をつけ、静かに手を合わせ「すみません、遅くなりました。」とあいさつした。墓所はひっそりとしていた。置かれていたジュースは『愛のスコール』で、よく見ると、さくらんぼ味であった。なるほど、私は普通に果物しか思い浮かばなかった。太宰と一緒に食べてくださいと、呟いた。

 富栄の太宰に対する恋の炎は、出会った日から激しく燃えだした。
戦闘、開始! 覚悟しなければならない。私は先生を敬愛する。』

 他にも、日記には富栄の苦しい胸の内が書かれている。
先生の心なんか分からない。
 分かるもんか!
 馬鹿。分かるもんか!
 頭が混沌としてしまって空廻りだ。
 女。唯それだけのもの。飽和状態の私。
 どうしていいのか、拭いとりたい気もするし、ずるずると入りこんでしまいたい気もする。
 おい、お前! 助けてくれ。酔えなくなったのはお前のせいだ。鼻もちならない!ウンフフ、馬鹿々々、消えろ、消えてしまえ。やい、とみえ、起きろ、路傍の花など摘んでくれるな。いや、もういい
。』

 富栄には、奥名修一という夫がいたが、戦争に行き亡くなっている。しかし、まだ戦死公報も届いていない。そんな中、妻子ある男と関係をもった富栄は、罪悪感、自己嫌悪に陥る。さらに、太宰の気持ちに振り回され、もどかしく、もやもやした感情が胸の中でぐるぐると回っていた。それでも、恋心は消えてはくれなかった。 
 
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 やがて、太宰も富栄も死の決心が固まり、遺書を残して玉川上水に飛び込むのであった。富栄の遺書の内容は、ここでは割愛させてもらう。

 死後60年以上が経つが、2人が川に身を投げた状況は、今となっては分からない。当時は、山崎富栄が太宰を殺したような話しも多く出たが、今では、そんな馬鹿な話を信じるものはいないし、我々太宰ファンも、山崎富栄の太宰に対する真直ぐでひたむきな恋心を、少なからず理解しているつもりだ。

 お供えしたさくらんぼを、天国で仲良く食べてもらえれば幸いである。



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by dazaiosamuh | 2014-07-03 07:29 | 太宰治 | Comments(0)

by 黒森 富治大(くろもり ふじお)