2014年 06月 28日
太宰治 知る人ぞ知る! 銀座のバー・ルパン №2
銀座のバー・ルパンに来た目的は、太宰が座ったであろうポジションにて座り、しかも、似せた服装、ポーズで撮影することであった。もちろん、その場所で太宰気分に浸りながら酒を飲み、マスターから太宰の話を聞くことも目的の一つだ。
私はただポーズをとっているだけだから良いが、Sさんは、撮影にかなり苦心したようだ。今か今かと、私はひたすらベストショットが撮れることを心の中で祈りながら、太宰ポーズに集中した。
Sさん「撮れましたよ、どうですか。確認お願いします」
いえ、よく見たら自分でした。自分でまじまじと見ながら、うっとりしました。まさかこんな日が来るなんて、しかも、写真の右上をよく見ると、太宰の写真が写っています。まさかのツーショット。同じポーズでまさかのツーショットです。Sさんは、これを狙って撮ってくれたのか、それとも奇跡(太宰のいたずら)なのか。
私は、この日のために、気温が30℃近くまで上がる中、ベストにネクタイ、ブーツを着用して臨んだのだ。この時を以ってして報われたのだ。ちなみに、太宰は兵隊靴ですが、この撮影のためだけに、少しでも似せようと、私もミリタリー使用のブーツ(3万円)を買いました。
太宰はルパンで何の煙草を吸っていたのか、マスターに尋ねてみましたが、分からないみたいです。一応、私は太宰が吸っていた有名な煙草「ゴールデンバット」を指に挟んで撮影しました。ズボンは、太宰はウール素材を穿いていたようですが、この時期、どこのお店にいってもウール素材のズボンは売っていなかったため、今回はスーツにしました。(写真をよく見ると、左足の位置が少し違うが、まあ上出来だろう)
私とSさんは、興奮を抑えつつ太宰の座っていた場所に座り、お酒を頼みました。マスターに、太宰はよく何を飲んだのかと聞くと、やはり、ビール、日本酒、ウィスキーだったそうです。私はお酒は弱いのですが、せっかくなのでウィスキーを飲んでみました。うむ、やはり私にはきついです。
しかし、飲んでいる最中、マスターが「このウィスキーのグラスは、太宰がいた当時からあるものです。今では数が無く、かなり貴重ですよ」と言ってきたので、「えっ、では、もしかしたら、太宰もこれを使ってウィスキーを飲んだりもしたのでしょうか」と言うと、「そうかもしれません。可能性はあります」と言った。
なんということでしょう!私はもしかしたら、60年以上の時を超えて、太宰と間接キスをしたかもしれないのです(太宰は好きだが、別に太宰とキスしたいとは思っていないですし、そういう趣味もないことは、一応、言っておく)。
マスターが、「後ろの便所のドアも当時のままなので、太宰がドアノブを握ったかもしれませんよ、握れば、間接的に太宰を感じることができるかもしれませんね」と言った。
その後、私とSさんは太宰席でビール等を飲みながら歓談し、お店を出て行くのですが、ここで写真を撮れたことと、もう一つ最高にうれしかったことがありました。
それは、私がマスターに「私みたいに、太宰の服装を真似て、同じポーズで写真を撮りに来る人は、やっぱり、いるんですよね」と訊くと…。
「いえいえ、いませんよ、お客様ぐらいですよ。ポーズを真似る人はいても、服装まで真似して来られた方はお客様だけです」と言われた事でした。最高に嬉しかった。今まで生きてきて、一番感激した瞬間かもしれません。
1時間ほど飲み、私とSさんはマスターにあいさつし、マスターも「また来てください」と言い、お酒に酔っているのか、太宰に酔っているのか、自分でも分からない、夢心地の気分でルパンを後にしました。
苦心しながらも撮影してくださったSさん、そして親切なマスター、ありがとうございました。